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虹彩の宝石箱-資料室-
長い間、黒ばかり見ていた。
耳も、舌も、足にも問題は無い。それなのに、目だけが無い。
そんな自分を受け入れる相手がいるなど、考えたことが無かった。
だからこそ。
出来損ないだった自分に目を与えてくれた彼は、命の恩人に他ならない。
それから、傍に居させてくれて。我儘も、幾つか聞いてくださった。
お優しい方だ。…誰が何と言おうとも。
だけど、未だに彼が自分を助けてくれた理由が分からない。
幼い頃に何度か聞いてみたことはあるが、はっきりとした答えが返ってきた事は無かった。
彼と仲の良い方々をあたっても、結局分からないまま。
…まあ、気にする必要もないか。
どのような理由であっても、そもそも理由などなかったとしても。
彼が自分を助けてくださったという事実には変わりが無い。
私は、幸せだ。
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