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虹彩の宝石箱-資料室-
一人目。
あまりにも静かで、何も無いのが暇だった。
会話が出来る生命があれば少しはマシになるかとようやく思い当たり、暇潰しも兼ねて創り始めた。
それなりに時間は掛かったと思う。それでも、感情は最後まで創れなかった。
二人目。
何時から存在していたのかは知らない。人間が生まれた後の事だったと思う。
初めから妙に親しげで、定期的に此処に来ては小言を言って帰っていく。
…かと思えば、いつの間にか二人に分裂していた。害は無いしどうでも良いけど。
三人目。
気付かない内に、柱の陰に座り込んでいた。目の見えない子ども。
一月経ってもそこを動かないから、目を創り直してやったら…何故か懐かれてしまった。
何を言っても何をさせても僕の傍を離れようとしない。態度も変わらない。
僕の何がそんなに好ましい?
四人目。
変な人間だと思った。
こんな化物を助けて、見返りは何も求めない。恐がるどころか、対話を求めてさえ来る。
何時も他人の事ばかり考えているような人間。それは、死んでも変わらなかったらしい。
…どうかしている。
こんな事をする義理も、意味も、必要も無い筈なのに。
この数年で、随分と彼奴の影響を受けたらしい。
五人目。
人間に限りなく近い物を創る予定だった。
でも彼奴は、創る途中で何処かへ逃げ出してしまった。
不完全なまま、何も入っていない身体で。
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