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虹彩の宝石箱-資料室-
幼いころから、一人でいることが多かったように思う。
生まれつき目の色素がほぼ無い私は盲目だと勘違いされやすく、距離を置かれやすかったから。
教会の隅にある、他の方が滅多に立ち寄ることの無い木陰で、静かに一日を過ごしていた。
この場所に初めて他の誰かを連れてきた、あの日は―日差しの強い初夏だった、と記憶している。
真っ白い髪をした、“目の見えない”男の子。
…まさか、本当に盲目の子と話をすることになるなんて。
当時は、かなり動揺したことを覚えている。
とはいえ、もうかなり昔の話だ。
何を話したのかは、殆ど忘れてしまった。
唯一ハッキリ覚えているのは…白い目を「好きだ」と褒められたこと、だけ…
結局、あれからあの子に会うことは一度も無かった。
教会で会うことは無かったし、彼のことらしい話を聞くことすら―
…せめて、名前くらいは聞いておくべきだったかしら。
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